「ひょうげん」について考える 2022/12/25
今回の参加者は9名でした。 (小学生高学年:2名、中学生:3名、高校生:2名、大学生以上:2名) 3つのグループでワークに取り組みました。(1人はワーク③から参加)
ワーク①「芸術家/アーティストのイメージ」
表現することを職業にしている「芸術家/アーティスト」のイメージや特徴を書き出すワークです。特に今回のブレストは”意見の量”を意識して、思ったこと感じたことをそのままシートに書き出してもらいました。1分間の個人ワークの後、グループに分かれて3分間意見共有を行いました。
1人3個以上は意見が出ていて、活発なグループワークができました。(割愛している意見あり。真ん中グループはワーク③からの参加が1人いました。)
マイナスな意見から職業を想起させる意見まで、さまざまな考えが飛び交いました。「個性的・独創的・信念・こだわり」などから、自分の芯を持っているイメージがうかがえます。
ワーク②「作品をみて思ったこと」
世界的に有名な作品をみて、率直に思ったこと感じたことをシートに書いていくワークをしました。作品はピカソの「泣く女」。個人ワーク1分、グループワーク5分行いました。
色んな視点からの意見が挙がりました。「悲しそう・泣いている・人なの?」など作品を見た感想、「角ばっている・カラフル」など作品に書かれている事実、「独創的・自由・多角的」など他作品との比較から思うこと・・・。さまざまな種類の意見が出ていることが分かります。時間の関係で実施できませんでしたが、意見のグルーピング※をするのに最適な量だったと思います。次回以降、グルーピングを重点的に行う時間も設けたいと思っております。 ※グルーピング・・・近い意見をグループ化すること
ワーク②の最後に話したことをそのまま記します。 「リアリティ(現実)を求めていない気がする」という意見も挙がりましたが、この作品に「リアルさ」はあまり感じなった人が大半だったかと思います。 しかし、ピカソはこの作品で”ピカソなりのリアルさ”を表現していたといわれています。
どういうことかというと、たとえば女性の顔を描くとき、大半の人は自分が見ている位置から見たままを描くと思います。 その見る位置、すなわち”視点”にピカソは疑問を持ちました。1つの視点で見たものを描くだけではリアルさを表現できてないんじゃないか。視点を変えて、複数の視点からみたもの描けばいいんじゃないか。(右図) そうして、左からみた目やったり、右からみた鼻をひとつの顔として作り直す、複数の視点でみたものを合成するという表現をしました。 それを踏まえてみてみると、作品の感じ方が変わってくるかと思います。
ただ、「再構成するのがいい」とか「どっちの方がリアルだ」とか、そういうことではなく、リアルさに正解はないし、表現の仕方はさまざまってことを知ってもらえたらいいと思います。
ワーク③「作品をみて思ったこと」
先ほどの話をふまえて、もう一度作品をみて、感想を書き出していきました。作品はカンディンスキーの「コンポジション」。個人ワーク1分、グループワーク6分行いました。
作品の感想を共有する点ではワーク②と同じですが、グループワークの方法を少し変えました。グループリーダーに、受講生の感想を大きく2つに分類してもらいました。「作品に描かれている事実」と「作品から考えた意見」の2つです。そして、事実に関する感想には「そこからどう思う?」という問いかけ、意見には「どこからそう思う?」の問いかけをして、受講生にもう一歩考えてもらいました。
具体的な対象物がない作品をあえて選びました。「何を描いているかわからない」と投げやりな意見も予想しておりましたが、一切ありませんでした。 色について、カタチについて、作品が発しているメッセージについて、小さなことでも感じ取ろうとする受講生の姿勢に好感を持ちました。複数回参加している受講生が多いため、回を追うごとに考えるクセが身についていると感じます。
ワーク③の最後に話したことをそのまま記します。 グループリーダーが「そこからどう思う?」「どこからそう思う?」という問いかけをしました。 たとえば「赤青黄いろいろある」って感想があったとします。それはこの作品にある事実です。「その事実からどう思う?」と問うことで、「楽しそう!」という自分の意見が出てきます。 反対に、「うるさいなぁ」と思ったら、それは自分が感じた意見ですね。「どの事実からそう思う?」と問うことで「色んな線があるからそう思うんだ」、といった事実にたどりつくことができます。 これを繰り返して事実と意見を往復すること、言い換えると”探求する”とういうことです。探求しながら作品に触れることで、理解が深まるとともに、自分の想像力も豊かになると思います。それを今回のワークで体験してもらいました。
ワーク④「ゲストの話を聞いて考えよう」
後半のワークでは、表現の仕事に携わっているゲストを招き、「表現することの必要性」について話を伺いました。 今回は、俳優の「山崎掌(つかさ)」さんに話してもらいました。
質疑応答というカタチで、事前に受講生からもらった質問を混ぜながらインタビューしたのですが、受け答えする様子が16歳とは思えないほど落ち着いておられました。 俳優をはじめたきっかけや魅力、表現することの難しい部分、最近取り組んでいる脚本作りなど、さまざまな質問について真摯に話していただきました。質問を聞いて即答するというより、一呼吸置いて淡々と話されるところが印象的でした。その部分に表現者ならではの佇まいを感じました。
個人的に印象に残ったのは、”演じるときに大変だなぁと思うこと”を訊いた時です。つかささんは、「納得のいく言い回しができないとき」と答えられました。「頭の中でこう表現しようと思っていても、いざ言葉にすると表現ができない。そうゆうときは大変だ。」とおっしゃっておりました。 「そうなったら、一旦考えを引き離してリセットする。そして、気分転換に本を読んだりしていると、表現にふさわしい言葉や言い回しが生まれてくる。」というように、乗り越える方法まで教えていただきました。
インタビュー後に、質疑応答を行いましたが、つい予定時間をオーバーしてしまいました(笑) それほど受講生の関心が高く、たくさんの話を聞くことができました。ですので、ワーク⑤は実施せず、受講生の感想を共有することで今回の授業は完了しました。
「表現することや自己主張すること、日常的にある何かから発展させてつくるということはロボットプログラミングと共通していると思った」という感想や、 「オリジナリティはたくさんの型を自分に落とし込んでつくれるものなので、色んなものに触れて解釈を繰り返していきたい」という感想がありました。
あまり見かけない職種の方から話を聞けるのは本当に貴重なことです。そのことを受講生はしっかり認識し、自分事としてどう吸収していくか、考えている様子が印象的でした。
このように”自分以外の人の考えに触れられる”のがよのなか科の魅力です。時にはリアクションを取りながら話をしっかり聞く。そのうえで、「この考えいいなぁ」と思ったら自分に取り入れる。90分の時間でこれほどいろんな考えを吸収できるのはよのなか科しかない!、そう思っております。
これまでキープオンでは、13回開催してきました。 8月「いきる」 10月「ものづくり」 12月「ことば」 1月「インターネット」 2月「いなか」 3月「アイデア」 4月「べんきょう」 5月「おかね」 6月「しごと」 7月「いきる(ライフイベント編)」 8月「コミュニケーション」 9月「おかね(経済編)」 10月「ゲーム」 11月「ロボット」
次回のテーマは「しゅうちゅう」です。2023年一発目の授業にふさわしい内容になっております。ぜひご参加ください!
日時:1/29(日) 10:30~12:00:「しゅうちゅう」
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