できるようになる「5つのステップ」
- 川原
- 3月18日
- 読了時間: 7分
更新日:3月19日
現代は「VUCA」や「人生100年時代」と呼ばれ、これまでの常識が通用しない変化が激しい時代です。インターネットやAIの進化、毎日大量の情報が生み出されることも、その変化に拍車をかけています。
そうした変化の影響を受けるのは、子どもも大人も同じです。年々、転職をする人や転職を促すCMも増えていることからも、一つの会社で定年まで働く人の方が少ないという世の中も、そう遠くないのかもしれません。これは十数年前までは考えられなかったことです。
人の動きだけでなく、「モノ」の変化も激しくなっています。例えば、スマホ。有名なiPhoneが日本で初めて発売されたのは2008年。17年前はだれも持っていなかったモノが、いまでは持っていない人の方が少ないわけです。電子決済の主流であるPayPayのサービスが開始されたのは2018年。わずか7年前ですが、若者の中には「現金を入れた財布は持ち歩かなくなった」という人もいるほど普及しています。この20年ほどのモノの変化は、私たちの生活そのものを変化させるほどのインパクトがあるものも少なくありません。
現代の変化についていくのも大変ですが、いまの子どもたちが大人になるときには、更に変化の激しい時代となることが予想されます。そうした時代を、学校での学びだけで生き抜いていくことができるのでしょうか?
勉強が変わっている
勉強の代表である、高校、大学入試の形に変化が見られるのはご存じですか?筆記試験の点数による振り分けだけではなく、面接や小論文、実技試験などを含めた「総合型選抜(旧AO入試)」と呼ばれる入試の割合が増えています。

どうしてそんな変化が起きているのでしょう。これは最初に述べたように、社会の変化が大きく影響しているからだと思います。私自身も会社員を経験しましたが、総合職として就職した社員に求められるのは、決まった仕事を一定数こなすことではありません。お客さんによって対応方法を変えたり、メールの文面や電話の対応一つをとっても、都度、状況や環境に応じて上手く立ち回ることを求められます。それらには、正解のマニュアルはありません。自分で考えて自分でベストだと思う選択をし、結果を反省して次に活かすことが重要になってきます。これから求められるのは、こうした考え方を行動に移せる人だと思います。とはいえ、学校を卒業して社会に出るとき、そうした能力は身に付いているのでしょうか?
学びの「5ステップ」
今回は「自分で考えて行動できるようになることを目指す」という捉え方で、学びを5つのステップに分けてみました。

これを、みなさんが通る「学校の学び」と私たちの「スクールが目指す学び」に絡めながら説明していきます。
①「知識の壁」を越える
まず一つ目の壁が「知識の壁」。この壁の前後では「知らない」と「知る」という状態です。この学びとは、学校での授業やテストでの学びです。知らないことを学び、知識として蓄えていくことで、知る(知っている)状態になっていきます。本来、知らないことを知ることは楽しい学びなので、知識の壁を越えていくのはワクワクすることでもあります。学校の勉強で、自分が知っているかどうかを確認するのはテストの点数にです。知らない状態よりは知っている方がいい、テストの点数も低いよりは高い方がいい。この考え方に慣れてしまうと、段々とテストで高い点を取るために知識を増やしていくことになり、結果が伴わなくなると、勉強がイヤになってしまいます。
②「行動の壁」を越える
次の「行動の壁」はどうでしょう。学校では、テスト以外に知識を使う機会はあるでしょうか?教科書で知識を学び、テストで確認をするという流れが強すぎて、その知識をテスト以外で活用する機会はどうにも少ない気がします。その中で、理科の実験や家庭科の調理実習などは「やってみる」といえるかもしれません。「やってみる」の特徴として、自分で行動することがカギになってくるのですが、学校の授業内では「自分で考えてやってみる」という要素が不足しています。理科の実験は教科書の内容、調理実習も決まったメニューといったように、行動はしていても、決まったことをしているだけで、自分で考えたことをやっている、とは言い切れないのです。
この決まりきった「やってみる」しか経験しなかった場合、社会に出たときには活かせない可能性が高いです。社会には、教科書も無ければメニューもない。「やってみる」とはいっても、「何をやってみればいいのかがわからない」。自分で考えることができないと、少しのイレギュラーがあると対応できなくなってしまいます。
そこで、スクールではロボットプログラミングを通して、この「自分で考えてやってみる」を身に付けてほしいと思っています。テキストをこなすのは決まったことをやって「知識の壁」を越えるため。テキストで学んだ知識を使って、自分だけのロボットを作ることが「自分で考えてやってみる」につながります。テキストは学校の学びと同じで、自分でできることを増やすための知識をつけるために必要ですが、そこから、自分で考えて使えるようになる(やってみる)かどうかが大きな違いなので、スクールではそこを目指してほしいというのが、スタッフとしての本音です。
③「気づきの壁」を越える
自分で考えてやってみることが大切なのは、気付きがあるからです。やる前は簡単だと思っていたことがやってみると上手くいかない、自分がわかっていると思っていたプログラミングの知識が間違っていたといったことに気付けるかどうかは「やるかやらないか」で変わります。実際にやってみて、自分が本当にわかっているのかわかっていないのかを知ることができるということです。「無知の知」という言葉がありますが、「自分はわかっていないことがある」ということをわかっている人は「気づきの壁」を越えた人。やってみて自分で気づいた経験がないと、自分が本当はできないということはわかりません。「知識を得たからわかっている」と思い込んでいると、大人になってから手痛い失敗をしてしまうかもしれません。
④「技術の壁」を越える
5ステップの中で、最後に越えてほしいのが「技術の壁」。これまでのステップを踏んでいれば、頭の中にある知識を自分が使えるかどうかはわかっている状態です。その状態からもう一歩自分を高めるには、だれかに知識を「伝えられること」が重要です。わかってるし使えるけど、「なんとなくやればできる状態」と「知らない人にわかるように伝えられるて、100回やったら100回できる状態」では大きな違いがあります。だれかに伝えたり教えたりするためには、なんとなくではなくて、しっかりと理解しておく必要があります。そして、100回やって100回できるというのも、知識の理解だけでなく、自分のモノとして技術を身に付けた状態です。スクールでの学びも、ロボットの動きがどうしてそうなるのか、どうプログラミングすれば思った通りに動くのか、といったところまで考えることで、この力を育んでいってほしいなと思います。
⑤「習慣の壁」を越える
この最後の壁は、その人の生き方になっていく部分です。自分の学びの目的を「技術の壁」を超えるところに設定し、それを続けることが、いつしか習慣になっています。一度この経験ができれば、他の学びでも同じように磨いていけるでしょう。習慣になるまで考えて学び続けられるかどうかは、その人自身に依るところが大きいです。スクールでの学びは、技術の壁を越えて「できる」「伝えられる」状態になるまで。そこから先の「習慣の壁」を越えるには、一人ひとりがそれを続けたいと思えるかどうかなので、無理矢理ここを目指せとまでは言いたくないなと思います。
学校以外でも学び、時代を生き抜く力を身に付ける
自分で考えて行動していくことは、最初にも書いたように、これからの時代でますます重要になっていきます。学校の勉強も「知識の壁」を越えるためには大切ですが、それだけでは足りないというのが、これからの子どもたちの未来だと思います。
特に「行動の壁」が一番高いハードルであり、一番大切だと思っています。決まったことをして、確認テストなどで理解できたとしても、それはあくまで教えてくれた方の考え方や方法を把握したに過ぎず、自分自身のものにはなっていません。本当の理解とは、自分で考え、実際に行動し、その過程で感じたことや得た気づきを加えることで初めて得られるものだと考えています。たとえ思うようにいかないことがあっても、その失敗や課題を実際に体感すること自体が大切です。
しっかりと知識をつけ、それをテストのためだけに使うのではなく、自分がやりたいことや考えていることに使えるようになること。学校だけでは学べない力をスクールで学びながら、楽しく身に付けてほしいと思っています。ロボットプログラミングだけでなく、発表会やイベントを通して、みんなが社会に出ても楽しんでいけるような力を身に付けていける機会を設けています。
スタッフ含めスクールに関わる方々みんなで、一歩進んだ学びの場を創っていければと思っています。
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